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長岡京市の内科・呼吸器外科クリニック

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高血圧症

高血圧症

高血圧症(Hypertension)は、血圧が慢性的に高い状態を指します。収縮期血圧(いわゆる「上の血圧」)・拡張期血圧(「下の血圧」)のどちらか、または両方が持続的に高い状態です。

高血圧の基準(簡易版)

日本高血圧学会などにより、一般的には次のような分類が使われます:

分類収縮期血圧(mmHg)拡張期血圧(mmHg)
正常高値120–12980–84
高値血圧(予備軍)130–13985–89
高血圧(ステージ1)140–15990–99
高血圧(ステージ2以上)≥ 160≥ 100

ただし、年齢・合併症・個人のリスク状況などによって判断基準は変わることがあります。

高血圧が問題となる理由

持続的な高血圧は、血管に過度の負荷をかけ、以下のような合併症リスクを高めます:

・脳卒中(脳出血・脳梗塞)
・心筋梗塞、狭心症、心不全
・慢性腎臓病(腎機能低下)
・大動脈・末梢血管の動脈硬化
・視力・網膜への障害

したがって、高血圧は「静かな心血管のリスク因子(沈黙の殺人者;サイレントキラー)」と呼ばれることもあります。

高血圧の原因とリスク因子

高血圧が起こる原因は一つだけではなく、以下のようなさまざまな因子が関与します。

原因・誘因

  1. 過度の塩分摂取
    食塩(ナトリウム塩)を多く摂ると、体内で水分を保持しやすくなり、血液量が増加して血圧が上がる傾向があります。
  2. 肥満・過体重
    体重が増えることで心臓・血管の負荷が大きくなり、高血圧になりやすい。
  3. 運動不足
    身体を動かさない習慣は、血管・心臓を弱くし、高血圧リスクを上げます。
  4. 過度の飲酒・喫煙
    アルコールの過剰摂取、喫煙は血管へのダメージを与え、血圧上昇を助長。
  5. ストレス・緊張・睡眠障害
    長期的なストレスや交感神経過剰活動、睡眠の質の低下は血圧を上げる因子になり得ます。
  6. 遺伝的素因
    家族歴に高血圧があるとリスクが高くなることが知られています。
  7. その他の疾患
    慢性腎臓病、ホルモン異常(副腎機能異常、甲状腺疾患など)、睡眠時無呼吸症候群など、二次性の原因が関与する場合もあります。

高血圧の診断

高血圧と診断するには、以下のような方法が一般的です:

  1. 診察室での血圧測定
    複数回にわたり診察室で血圧を測定し、安定して高値を示すかどうかを確認。
  2. 家庭血圧測定(家庭血圧モニタリング、HBPM)
    家庭で朝・晩に血圧を測定し、日常生活下での血圧傾向を把握します。
  3. 24時間血圧モニタリング(ABPM)
    血圧計を24時間装着し、日中・夜間を通じて血圧の変動を記録。白衣高血圧や夜間高血圧を把握するために有用。
  4. その他の検査
     ・血液検査(腎機能、電解質、脂質、血糖など)
     ・尿検査(蛋白・潜血など)
     ・心電図、心エコー、胸部レントゲン、頸動脈エコーなど心臓や主要血管の評価
    そして検査で異常があったり、治療で改善しない場合には、腎泌尿器系検査、ホルモン検査なども追加検査することがあります。

治療の目標

治療の最終目的は、合併症の発症を防ぎ、患者さまの寿命とQOL(生活の質)を維持・向上させることです。
年齢や合併症リスクを鑑みながら目標血圧を設定し、一般的な目安として降圧治療中は「収縮期血圧 < 130 mmHg、拡張期血圧 < 80 mmHg」を目標とすることが多いです。
ただし、降圧治療は低血圧のリスクもあるので、特に高齢者の方にはなるべくしっかりご自宅での血圧測定をしていただき、過剰な投薬を避けることも非常に重要です。

治療方針

高血圧治療は、大きく「生活習慣改善」と「薬物治療」の 2 本柱で進められます。

1. 生活習慣の改善(非薬物療法)

以下は投薬の前にまず取り組むべき項目です:

減塩
食塩摂取を1日6g未満(あるいはより厳格な制限)にする。加工食品・外食での塩分にも注意。
適正体重維持・減量
BMI 正常域を目指す(一般に22前後)。減量は血圧低下に効果あり。
運動習慣
有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、サイクリングなど)を週150分程度が目安です。強度や頻度は年齢や体力に応じて調整してもらいます。
禁煙・飲酒制限
禁煙が最も強く推奨され、長期的には効果が非常に高いです。
アルコール量は1日純アルコール換算で男性20–30g、女性10–20g程度に制限することが推奨されます。
食事改善
野菜・果物、魚、食物繊維を増やし、飽和脂肪酸・トランス脂肪酸の少ない食事を心がける。
ストレス管理・十分な睡眠
ストレス軽減(運動、趣味、瞑想等)をおすすめします。また十分な睡眠時間と睡眠の質を保つことも大切です。不眠の背景に睡眠時無呼吸症候群がある場合には、そちらの治療も積極的に行なっていきます。

2. 薬物療法

生活習慣改善を行っても十分な降圧が得られない場合、降圧薬(血圧を下げる薬)を開始します。どの薬剤を使用するかは、年齢、腎機能、合併症(糖尿病、心血管疾患、腎疾患など)、既存薬との相互作用などを考慮して行います。
主な薬剤の種類は以下の通りです:

カルシウム拮抗薬
アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE 阻害薬)
アンジオテンシン II 受容体拮抗薬(ARB)
利尿薬
β遮断薬
α遮断薬など

しかし、かなり高血圧が進行している方には複数薬の併用が必要になります。

3. フォローアップとモニタリング

・投薬中は定期的な受診と血圧チェック
・血液・尿検査、腎機能や電解質のモニタリング
・薬の副作用チェック(腎障害、高カリウム血症、低血圧など)
・併存疾患(糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病など)の管理

当クリニックでの対応

当院では、以下のような流れで高血圧の診断・治療を行っております。

①問診・理学所見・既往歴・生活習慣の聴取
②診察室血圧・家庭血圧測定指導
③必要に応じて24時間血圧モニタリング(ABPM)を実施
④血液、尿、心臓、腎機能など関連検査
⑤合併症リスク評価(心血管疾患、腎疾患、脳血管疾患など)
⑥まずは生活習慣改善から介入
⑦必要に応じて抗高血圧薬を選択・開始
⑧定期フォローとモニタリング
⑨必要時、専門医紹介(例:腎臓内科、循環器内科など)

患者さん一人ひとりの背景・体質を重視し、安全かつ効果的な治療を心がけています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 治療を始めたら一生薬を飲み続けなければいけませんか?
A. 必ずしも一生ではありませんが、多くの方は長期継続が必要になります。ただし、生活習慣改善が十分であれば、将来的に薬の減量や中止が検討できる場合もあります。

Q2. 血圧が一時的に高い日もあり、波があるのですが?
A. 血圧は日内変動・心理的影響・体調などで変動します。だから一回の測定だけで判断するのではなく、複数回・異なる時間帯での測定が重要です。

Q3. 塩分を完全にゼロにすればいいのでしょうか?
A. 塩分をゼロにすることは現実的ではありませんし、健康なミネラルバランスも損なわれます。適度な制限(1日6g未満など)を目指すのが一般的です。

Q4. 薬に副作用はありませんか?
A. どの薬にも副作用リスクはあります。例えば利尿薬では電解質異常、降圧薬ではめまいや立ちくらみなどがあります。定期的なモニタリングが重要です。

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