脂質異常症(高脂血症)
薬師堂かたおかクリニック 院長 片岡 尚之(かたおか たかゆき)
平成27年 大阪医科薬科大学卒業/同大学病院 初期研修修了/同大学 呼吸器外科 後期研修修了/市立ひらかた病院 呼吸器外科 医長・救急科 医長
脂質異常症の専門医ではありませんが、救急科医長として、脂質異常症が引き金となる心筋梗塞・脳卒中など緊急度の高い病態に数多く対応してきました。かかりつけ医として血液検査(LDL・HDL・中性脂肪)から全身状態を確認し、食事・運動療法の指導から内服治療まで継続的にサポートします。動脈硬化がすでに進んでいる場合や、より専門的な治療が必要と判断した場合は、連携する循環器内科へおつなぎしています。
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「健診でLDLコレステロールが高いと言われたけれど、特に体調は変わらない」――脂質異常症(高脂血症)はこうした形で見つかることがほとんどです。自覚症状がないまま動脈硬化を進行させ、気づいたときには心筋梗塞や脳梗塞といった重大な病気の引き金になっていることがあります。
長岡京市の薬師堂かたおかクリニックでは、かかりつけの内科として血液検査からLDL・HDL・中性脂肪の数値と全身状態を確認し、食事・運動指導から薬物治療まで継続的にサポートしています。将来の心筋梗塞・脳梗塞の発症リスクの確率が気になる方は、リスク計算ツールもご活用ください。
- 脂質異常症は自覚症状がほとんどなく進行する
- 悪玉コレステロール(LDL)が高いほど動脈硬化が進みやすい
- 善玉コレステロール(HDL)は血管を守る役割
- 最大のリスクは心筋梗塞・脳卒中などの血管障害
- 治療の目的は「血管を守り、合併症を防ぐこと」
- 遺伝が原因の脂質異常症(家族性高コレステロール血症)もある
- 食事改善・運動療法・薬物治療の組み合わせで改善できる
- 脂質異常症と動脈硬化について
- 善玉コレステロールと悪玉コレステロールの役割
- 脂質異常症の治療目的(何を予防する?)
- 脂質異常症の原因・セルフチェック
- 脂質異常症の治療
- 脂質異常症の対策・予防
- まとめ/当院での対応
- よくある質問(FAQ)
脂質異常症と動脈硬化について
脂質異常症(高脂血症)とは、血液中のLDL(悪玉)や中性脂肪(トリグリセライド)が基準値より高い、または、HDL(善玉)が低い状態を指します。
脂質異常症の診断基準(数値)
健診結果の数値がどの段階にあたるのか、まずは基準値で確認しましょう。
| 項目 | 基準値(mg/dL) | 分類 |
|---|---|---|
| LDLコレステロール | 140以上 | 高LDLコレステロール血症 |
| LDLコレステロール | 120〜139 | 境界域高LDLコレステロール血症 |
| HDLコレステロール | 40未満 | 低HDLコレステロール血症 |
| 中性脂肪(トリグリセライド) | 150以上(空腹時)/175以上(随時) | 高トリグリセライド血症 |
| non-HDLコレステロール | 170以上 | 高non-HDLコレステロール血症 |
| non-HDLコレステロール | 150〜169 | 境界域高non-HDLコレステロール血症 |
出典:日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022」
食後などの空腹時以外に採血した数値のことです。中性脂肪は食事の影響を受けて上下しやすいため、2022年版ガイドラインから「随時」採血の基準値(175mg/dL以上)が新たに設けられました。空腹時採血ができない健診でも判定できるようになっています。
non-HDLコレステロール=総コレステロールからHDL(善玉)を引いた値で、LDL以外の悪玉系脂質もまとめて評価できる指標です。
□ なぜ危険なのか?

最も大きな問題は、動脈硬化が進むことです。 動脈硬化は血管の内側に余分な脂肪が沈着し、血管が狭く・硬くなる状態です。
この結果、 心筋梗塞・脳梗塞・狭心症 といった命に関わる病気につながります。
脂質異常症には自覚症状がほとんどないため、健診での指摘が重要です。
脂質異常症は何科を受診すればよい?
健診で数値の異常を指摘された場合は、まず内科(かかりつけ医)を受診してください。問診・採血で全身状態を確認し、食事・運動療法から始めるべきか、薬物療法が必要かを判断します。動脈硬化がすでに進んでいる場合や、家族性高コレステロール血症が疑われる場合は、連携する循環器内科をご案内します。
善玉コレステロール(HDL)と悪玉コレステロール(LDL)の役割
□ LDL(悪玉)コレステロールとは?
LDL(悪玉)コレステロールは、肝臓で作られたコレステロールを全身の細胞へ運ぶ役割を持っています。 本来は必要な働きなのですが、血液中にLDLが多すぎると血管内皮のすき間から入り込み、酸化されて「酸化LDL」に変化します。
酸化LDLは、マクロファージ(体内の異物を取り込んで処理する免疫細胞)に取り込まれ「泡沫細胞(ほうまつさいぼう)」を作ります。この泡沫細胞が血管の壁に蓄積してプラーク(粥状の脂肪の塊)となり、動脈硬化の原因となります。
LDLが多い → 血管内皮の傷つき → 酸化LDLの増加 → 動脈硬化の進行
このように、LDLは「多すぎると血管を詰まらせる方向に働く」ため、悪玉と呼ばれています。
□ HDL(善玉)コレステロールとは?
HDL(善玉)コレステロールは、血管の壁にたまった余分なコレステロールを回収し、肝臓に戻す働きがあります。 これを「コレステロール逆転送(Reverse cholesterol transport)」といいます。
血管内で以下のような”掃除役”として働きます:
- 炎症を抑制して血管内皮を保護する
- 血管壁に沈着したコレステロールを回収する
- 酸化LDLの増加を抑える
HDLが高いほど動脈硬化が進みにくいため、善玉と呼ばれています。
□ LDLとHDLのバランスが大切
LDLが高すぎても、HDLが低すぎても、動脈硬化は進みやすくなります。
- LDL(悪玉):血管に溜めやすい → 動脈硬化を進める
- HDL(善玉):血管から回収 → 動脈硬化を抑える
つまり、脂質異常症の管理で重要なのは、LDLを下げ、HDLを上げて、血管を守るバランスに整えることです。
脂質異常症の治療目的(何を予防する?)
治療の最終目的は、コレステロール値そのものより 血管を守り、重大な合併症を防ぐことです。以下の疾患は、徐々に進行する「動脈硬化」によってリスクが高まります。
- 狭心症・心筋梗塞
- 脳出血・脳梗塞
- 末梢動脈疾患
- 慢性腎臓病
脂質の数値から、将来どのくらい心配なのか実感できません。実は、医療者が用いる心血管疾患の発症リスクが計算できる久山町(ひさやままち)スコアというものがあります。
久山町スコア
心血管疾患(心筋梗塞、狭心症、アテローム性脳梗塞)の10年間の発生リスク
・冠動脈疾患の既往がある(二次予防)
・糖尿病、CKD(慢性腎臓病)、PAD(末梢動脈疾患)がある
・家族性高コレステロール血症がある
脂質異常症の原因・セルフチェック
脂質異常症(高脂血症・高コレステロール血症)は、生活習慣によるものと、遺伝・疾患など生活習慣以外によるものの両方が存在します。 多くの場合は生活習慣が深く関わりますが、なかには食事や運動とは無関係に数値が高くなるタイプもあります。
□ 生活習慣による主な原因
- 飽和脂肪酸の摂りすぎ(肉の脂身、バター、チーズなど)
- トランス脂肪酸の摂りすぎ(マーガリン、揚げ物、加工食品)
- 糖質やカロリー過多による中性脂肪上昇
- 運動不足(HDL低下・LDL上昇につながる)
- 肥満(特に内臓脂肪)
- 過度の飲酒(中性脂肪が上昇)
- 喫煙(HDL低下、動脈硬化促進)
- ストレスや睡眠不足によるホルモンバランスの乱れ
これらは日常生活の見直しで改善できるケースが多く、脂質異常症の予防・治療において非常に重要です。
脂質異常症のセルフチェック
次のような特徴に心当たりがある場合、脂質異常症のリスクが高い可能性があります。
- 肉の脂身・バター・揚げ物をよく食べる
- お腹まわりが大きく、内臓脂肪が気になる
- お酒を毎日、または多めに飲む
- 喫煙している
- 慢性的に運動不足で、体を動かす機会が少ない
- 血縁者(親・兄弟姉妹)が若くして心筋梗塞などを起こした
脂質異常症は何歳から気をつける?
LDLコレステロールは加齢とともに上昇しやすく、特に女性は閉経後(50歳前後)にコレステロールを抑える女性ホルモン(エストロゲン)が減ることで、LDLが上がりやすくなります。健診の対象となる40歳前後から数値を意識するとよいでしょう。一方、次にご説明する家族性高コレステロール血症では10代からLDLが高いことがあるため、家族に若くして心筋梗塞を起こした人がいる場合は、年齢にかかわらず早めの血液検査をおすすめします。
□ 生活習慣以外の原因(遺伝・疾患・薬剤)
1. 家族性高コレステロール血症(FH)
遺伝によって生まれつきLDLが非常に高くなるタイプの脂質異常症です。 生活習慣とは無関係に若い頃からLDLが高く、放置すると若年で心筋梗塞を起こすリスクがあります。
- 10代から LDL 180〜200mg/dL を超えることが多い
- 腱黄色腫(アキレス腱などの腱が膨らむ)
- 角膜輪(角膜の周囲に白いリング状の濁り)
- 近親者(親・兄弟姉妹)に若くして心筋梗塞などを起こした人がいる(早発性冠動脈疾患の家族歴)
早期に薬物療法が必要で、専門的な管理が推奨されます。
2. 内分泌・代謝の異常
- 甲状腺機能低下症(LDLが上昇しやすい)
- 糖尿病(中性脂肪上昇・HDL低下)
- 肥満症(LDL上昇・HDL低下)
3. 腎臓・肝臓の病気
- ネフローゼ症候群(LDLが極端に高くなる)
- 肝疾患(脂質代謝に影響)
4. 薬剤による影響
一部の薬は脂質を上昇させることがあります。
- ステロイド
- 利尿薬
- 免疫抑制剤
- 抗精神病薬
「食事や運動に気をつけているのにコレステロールが高い」場合は、こうした背景要因が隠れている可能性があります。
脂質異常症の治療
□ 食事療法
- 飽和脂肪酸(肉の脂、バター)を減らす
- トランス脂肪酸(マーガリン、加工食品)を避ける
- 青魚(DHA・EPA)を積極的に摂る
- 野菜・海藻・豆類で食物繊維を増やす
- 糖質・揚げ物・外食の頻度を減らす
□ 運動療法
- ウォーキングなど有酸素運動
- 筋トレによる基礎代謝アップ
- 週150分以上が目安
□ 薬物療法
| 薬の種類 | 一言でいうと |
|---|---|
| スタチン | LDLを下げる中心的な薬 |
| エゼチミブ | 腸からのコレステロール吸収を抑える薬 |
| PCSK9阻害薬 | 難治例・家族性高コレステロール血症に使う注射薬 |
| フィブラート系薬 | 中性脂肪の高い方向けの薬 |
| EPA製剤 | 中性脂肪を下げ、心血管予防に有効な薬 |
スタチンなどの薬は、まれに筋肉痛・脱力(横紋筋融解症)や肝機能の異常を起こすことがあるため、内服中は定期的な血液検査でチェックします。体調に変化を感じた場合も、自己判断で中止せず医師にご相談ください。
脂質異常症の対策・予防
食事療法・運動療法でご紹介した内容に加えて、ここでは生活習慣全体の見直しとして取り組みたいポイントをご紹介します。数値が"高め"の段階から対策を始めることが重要です。
- 禁煙する(喫煙は動脈硬化を進める独立した危険因子です)
- 適正体重を維持する(特に内臓脂肪を減らす)
- 節度のある飲酒を心がける
- ストレスや睡眠不足をためない
- 数値が"高め"の段階から定期的に血液検査を受ける
まとめ
脂質異常症(高脂血症・高コレステロール血症)は、症状が出ないまま動脈硬化を進行させる病気です。LDL(悪玉)を減らし、HDL(善玉)を増やすことで、心筋梗塞・脳梗塞といった重大な疾患を確実に予防できます。
健診で「コレステロールが高い」と言われた方は、早めの受診をおすすめします。食事・運動・睡眠などを整えることで、大きく改善できる病気です。
当院での対応
薬師堂かたおかクリニックでは、かかりつけ医として血液検査(LDL・HDL・中性脂肪)から全身状態を確認し、食事・運動指導から内服治療まで、一人ひとりの生活スタイルに合わせた脂質異常症診療を行っています。動脈硬化がすでに進んでいる場合や、より専門的な治療が必要と判断した場合は、連携する循環器内科へ速やかにご紹介しています。健康診断の結果で気になる数値があった方、症状はないけれど不安な方も、まずは当院にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
脂質異常症に症状はありますか?
コレステロールが高いと何がいけないの?
食べ物を気をつければ治りますか?
卵は食べても良いですか?
脂質異常症は治りますか?
脂質異常症は何科を受診すればいいですか?
薬を飲み始めたら一生やめられないのですか?
※本記事は、上記資料を参考に医師が内容を精査し作成しています。
月〜土診療 / 京都府長岡京市今里西ノ口7-1


















