慢性咳嗽
慢性咳嗽(まんせいがいそう)とは、8週間以上(およそ2か月以上)続く咳のことを指します。
風邪などの一時的な咳とは異なり、原因がはっきりしないまま長引くのが特徴です。
多くの場合は命に関わる病気ではありませんが、咳が続くことで眠れない・会話がしづらい・仕事や学校に支障が出るなど、生活の質(QOL)を大きく下げてしまうことがあります。
主な原因
慢性咳嗽の原因は多岐にわたります。
日本呼吸器学会の分類によると、代表的な原因は以下のとおりです。
| 原因疾患 | 特徴・症状 |
|---|---|
| 咳喘息 | 夜間や早朝の咳が多い。喘鳴(ヒューヒュー音)はないが、気管支の過敏性が亢進。 |
| アトピー咳嗽 | アレルギー体質に関連。喉の違和感・空咳が続く。 |
| 後鼻漏(こうびろう) | 鼻水が喉の奥に垂れ込んで刺激となる。鼻炎・副鼻腔炎に伴うことが多い。 |
| 胃食道逆流症(GERD) | 胃酸が喉まで上がり、刺激して咳が出る。就寝中・食後に悪化。 |
| 慢性気管支炎・COPD | 長年の喫煙歴がある人に多い。痰を伴う咳が続く。 |
| 薬剤性咳嗽 | 高血圧治療薬(ACE阻害薬など)の副作用として起こる。 |
| 心因性咳嗽 | 精神的ストレスや緊張で咳が出る。睡眠中は止まることが多い。 |
このほか、肺炎、肺結核、肺がん、間質性肺炎などの疾患が背景にある場合もあります。
そのため、原因を正確に見極めることが非常に重要です。
主な症状
・乾いた咳(痰が少ない)または痰の多い咳
・夜間・早朝に咳が強くなる
・会話や冷気・タバコの煙で咳が誘発される
・喉のイガイガ感、違和感
咳以外の症状(鼻水・胸やけ・息切れなど)が手がかりとなることもあります。
診断
慢性咳嗽の診断には、問診・診察に加え、いくつかの検査を行います。
| 検査 | 目的 |
|---|---|
| 胸部X線検査 | 肺炎・結核・肺がんなどの重大疾患を除外する |
| 呼吸機能検査 | 咳喘息・COPDなどの評価 |
| アレルギー検査 | アトピー咳嗽や気管支炎の鑑別 |
| 鼻・喉の診察 | 後鼻漏や副鼻腔炎の確認 |
| 胃酸逆流検査 | 胃食道逆流症の関与を評価 |
原因を一つずつ確認し、最も可能性の高いものから治療を行います。
治療
原因によって治療方法が異なります。
| 原因 | 主な治療法 |
|---|---|
| 咳喘息 | 吸入ステロイド薬、気管支拡張薬 |
| アトピー咳嗽 | 抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬 |
| 後鼻漏 | 点鼻薬、抗菌薬、鼻うがい |
| 胃食道逆流症 | 胃酸抑制薬(PPI)・生活習慣改善 |
| 慢性気管支炎・COPD | 吸入薬、禁煙指導 |
| 薬剤性咳嗽 | 原因薬の中止・変更 |
治療により多くの場合、数週間〜数か月で症状の改善がみられます。
ただし再発することもあるため、定期的な診察が重要です。
日常生活での工夫
・禁煙(喫煙は咳を悪化させる最大の要因)
・室内の加湿・保温(乾燥した空気は咳を誘発)
・マスクの着用(埃・花粉・冷気の刺激を防ぐ)
・刺激物(辛い食べ物・アルコールなど)を控える
・就寝時は枕を高くして、胃酸逆流を防ぐ
よくある質問(FAQ)
Q1. 風邪が治っても咳が止まらないのはなぜ?
A. 「かぜ後咳嗽」といって、感染後に気道が敏感になっていることがあります。通常は数週間で治まりますが、長引く場合は咳喘息などの可能性もあります。
Q2. 市販の咳止めでよくならないのですが?
A. 原因によって治療薬が異なるため、自己判断の薬では改善しないことが多いです。専門的な診断を受けることをおすすめします。
Q3. 咳が長く続くと肺が悪くなることはありますか?
A. 咳自体が肺を壊すことはありませんが、慢性的な咳の裏に肺の病気が隠れていることがあります。早めの検査で安心につながります。
当院での対応
当院では、以下の対応を行なっております。
・胸部X線や呼吸機能検査による原因の特定
・咳喘息・後鼻漏・胃食道逆流などの各種治療
・生活習慣・環境改善のアドバイス
「風邪が長引いている」「咳だけがいつまでも残る」と感じたら、早めにご相談ください。









