慢性閉塞性肺疾患(COPD)
慢性閉塞性肺疾患(COPD;Chronic Obstructive Pulmonary Disease) は、長年の喫煙などによって気道や肺に慢性的な炎症が起こり、空気の通り道(気道)が狭くなることで呼吸が苦しくなる病気です。
主に慢性気管支炎と肺気腫の2つの病態が含まれます。
進行すると息切れが強くなり、日常生活に支障をきたすことがあります。
原因
・喫煙(たばこ):最も大きな原因。日本のCOPD患者の約9割が喫煙歴あり。
・受動喫煙・大気汚染・粉塵曝露:職業性粉塵(建設業・鉱業など)や排気ガスなど。
・加齢:40歳を過ぎるころから症状が出始めることが多いです。
症状
| 症状 | 特徴 |
|---|---|
| 咳・痰 | 朝方に多く出る。長期間続くことが多い。 |
| 息切れ | 階段や坂道で息が苦しくなる。徐々に悪化。 |
| 呼吸音の異常 | ヒューヒュー、ゼーゼーという音がする。 |
| 疲れやすさ | 呼吸に多くのエネルギーを使うため。 |
進行すると、安静時でも息苦しさを感じるようになります。
診断
COPDの診断には、呼吸機能検査(スパイロメトリー) が重要です。
息を勢いよく吐く検査で、1秒率(FEV1/FVC)<70%であれば閉塞性障害と判断します。
他には、以下の通り血液検査、画像検査などで評価します。
・胸部X線・CT検査:肺の過膨張や肺気腫の有無を確認。
・血液検査・動脈血ガス分析:酸素や二酸化炭素の濃度を評価。
治療
COPDは進行性の病気ですが、早期発見と治療により症状を軽くし、進行を抑えることが可能です。
1. 禁煙
最も重要な治療です。
禁煙によって病気の進行を遅らせ、咳や痰の症状も改善します。
当院では禁煙外来によるサポートも行っています。
2. 吸入薬治療
症状の程度に応じて以下の薬剤を使用します。
| 薬の種類 | 主な作用 |
|---|---|
| LAMA(長時間作用性抗コリン薬) | 気道の筋肉を緩め、呼吸を楽にする |
| LABA(長時間作用性β2刺激薬) | 気管を広げて空気の流れを改善 |
| ICS(吸入ステロイド) | 気道の炎症を抑える(喘息合併例など) |
吸入薬は正しい使い方が大切です。医師・看護師が使用方法を丁寧に指導します。
3. 呼吸リハビリテーション
呼吸法の訓練(口すぼめ呼吸など)や軽い運動療法を行い、息切れを軽減します。
歩行・筋トレ・呼吸訓練などを無理のない範囲で継続します。
4. 酸素療法(在宅酸素)
重症化して血中酸素が低下した場合、自宅で酸素吸入を行う在宅酸素療法(HOT)を行います。
日常生活の注意
・禁煙を徹底する
・風邪やインフルエンザを予防(予防接種を推奨)
・栄養バランスを整える(過度なやせ・肥満に注意)
・無理のない範囲での運動習慣を維持
・室内の空気を清潔に保つ(換気・加湿)
当院での取り組み
当院では、呼吸機能検査による正確な診断と、症状に応じた吸入薬治療・呼吸リハビリ指導を行っています。
また、禁煙支援プログラムも併設し、「息切れの少ない生活」を取り戻すサポートをしています。
息苦しさや長引く咳・痰にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. COPDは治りますか?
A. 完全に治すことは難しいですが、禁煙と適切な治療で進行を抑え、生活の質を大きく改善できます。
Q2. 咳や痰が長く続くだけで受診した方がいいですか?
A. はい。特に喫煙者で3か月以上咳・痰が続く場合、早期の受診をおすすめします。早期に発見できれば、肺の負担を最小限に抑えることができます。
Q3. COPDと喘息はどう違うのですか?
A. COPDは喫煙などで肺が壊れる病気、喘息はアレルギーによる炎症が主体の病気です。ただし両方の特徴を併せ持つ「喘息合併COPD(ACO)」もあります。









