慢性腎臓病(CKD)とは?
ー原因・症状・進行・予防・治療・透析まで専門知識に基づき解説ー
本記事では、慢性腎臓病(CKD)の進行メカニズム、原因、症状、高血圧・糖尿病・脂質異常症など他の生活習慣病との関係、治療の目的、透析の基礎知識、そして改善のための生活対策まで、医師がわかりやすくまとめています。
本ページの要点
- 慢性腎臓病(CKD)は自覚症状がほとんどなく進行する
- 高血圧・糖尿病・脂質異常症が主要な原因で、互いに悪化させる
- 腎臓の機能は一度失われると元に戻らない
- 治療の目的は、進行を遅らせて「透析・腎不全」を防ぐこと
- 進行すると貧血・むくみ・疲れやすさ・尿量変化などの症状が現れる
- 透析は腎機能が極端に低下した際に必要となる治療
- 生活改善(食事・減塩・血圧管理・血糖管理)が進行予防に重要
目次
慢性腎臓病とは
慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)は、腎臓の働きが慢性的に低下した状態、あるいは腎臓に何らかの異常が持続している病気です。具体的には、血液検査で腎機能を示す指標であるeGFR(推算糸球体濾過量)が60mL/分/1.73m²未満に低下するか、尿検査でタンパク尿(0.15g/gCr以上)やアルブミン尿(30mg/gCr以上)が認められ、これらの状態が3か月以上続く場合に診断されます。
日本では成人の約8人に1人が慢性腎臓病と推定され、決して珍しい病気ではありません。初期段階では自覚症状がほとんどないため、健康診断などでの早期発見が非常に重要です。
慢性腎臓病の症状
慢性腎臓病の特徴は、初期段階ではほとんど自覚症状がないことです。病気がある程度進行してから、以下のような症状が現れることがあります。
- むくみ(特に顔や足)
- 疲労感・倦怠感(体がだるい、疲れやすい)
- 貧血
- 息切れ
- 食欲不振
- 尿の異常(泡立つ、色や量の変化)
- 夜間頻尿
これらの症状が現れた時には、すでに腎機能が相当低下している可能性があります。定期的な健康診断で尿検査や血液検査を受けることが、早期発見の鍵となります。
重症度分類(ステージ)
慢性腎臓病は、腎機能の程度と尿タンパクの量によって、重症度が分類されます。
eGFRによる分類(G分類)
| G分類 | eGFR | 状態 |
|---|---|---|
| G1 | 90以上 | 正常または高値 |
| G2 | 60~89 | 正常または軽度低下 |
| G3a | 45~59 | 軽度~中等度低下 |
| G3b | 30~44 | 中等度~高度低下 |
| G4 | 15~29 | 高度低下 |
| G5 | 15未満 | 末期腎不全 |
□ タンパク尿による分類(A分類)
- A1:正常~軽度増加(30mg/gCr未満)
- A2:中等度増加(30~299mg/gCr)
- A3:高度増加(300mg/gCr以上)
腎機能の低下度(G分類)とタンパク尿の程度(A分類)を組み合わせて、総合的に重症度を判定します。例えば、eGFR 47でタンパク尿0.6g/日の場合は「慢性腎臓病ステージG3aA3」と診断されます。
放置すると危険な理由
慢性腎臓病を放置すると、以下のようなリスクが高まります。
- 末期腎不全への進行:透析や腎移植が必要になる
- 心血管疾患のリスク増加:心筋梗塞、脳卒中、心不全などの発症率が高くなる
- 生活の質の低下:貧血、倦怠感、食欲不振などにより日常生活が制限される
- 合併症の発症:骨の異常、電解質異常、尿毒症など
適切な治療により、これらのリスクを大幅に減らすことが可能です
慢性腎臓病の原因
慢性腎臓病の原因はさまざまですが、現在特に増加しているのが生活習慣病に関連したものです。
□ 主な原因
- 糖尿病:最も多い原因の一つで、高血糖状態が続くことで腎臓の細い血管が障害されます
- 高血圧:腎臓の血管に負担をかけ、徐々に腎機能を低下させます
- 脂質異常症
- 肥満(特に内臓脂肪の蓄積)
- 慢性腎炎(IgA腎症など)
- 多発性嚢胞腎などの遺伝性疾患
- 加齢:腎機能は年齢とともに自然に低下します
特に糖尿病と高血圧は、慢性腎臓病の二大原因となっており、これらの疾患を適切に管理することが腎臓を守ることにつながります。
慢性腎臓病の治療
慢性腎臓病の治療目標は、腎機能の悪化を防ぎ、進行を遅らせること、そして心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患の発症を予防することです。
1. 生活習慣の改善
食事療法
減塩が最も重要です。1日の塩分摂取量は3~6g未満を目標とします。
- 醤油や味噌の使用量を減らす
- だしや香辛料、酢などで味に変化をつける
- 加工食品や外食の塩分に注意する
タンパク質の適正管理も重要です。ステージが進行すると、タンパク質の制限が必要になる場合があります。
適切なエネルギー摂取:必要なカロリーは確保しながら、バランスの良い食事を心がけます。
カリウム・リンの調整:病状に応じて、これらのミネラルの摂取調整が必要になることがあります。
その他の生活習慣
- 適度な運動:ウォーキングなどの有酸素運動を継続する
- 禁煙:喫煙は腎機能を悪化させます
- 適正体重の維持:特に内臓脂肪を減らすことが重要
- 十分な睡眠
- ストレス管理
- 適切な水分摂取
2. 薬物療法
原因となっている病気の治療が基本です。
- 血圧管理:降圧薬(特にACE阻害薬やARBなど)
- 血糖管理:糖尿病治療薬
- 脂質管理:脂質異常症の治療薬
- 貧血の治療:エリスロポエチン製剤、鉄剤など
- リンの管理:リン吸着薬
- 尿酸値の管理:高尿酸血症の治療
薬剤は腎機能に応じて種類や量の調整が必要です。必ず医師の指示に従い、市販薬やサプリメントの使用前にも相談してください。
3. 腎代替療法
末期腎不全(ステージG5)に進行した場合には、以下の治療が必要になります。
- 血液透析
- 腹膜透析
- 腎移植
慢性腎臓病の対策・予防
慢性腎臓病は早期発見・早期治療により、悪化を防ぐことができる病気です。以下のポイントを心がけましょう。
定期的な健康診断
- 年に1回以上、尿検査と血液検査(クレアチニン、eGFR)を受ける
- 健診結果で異常を指摘されたら、必ず医療機関を受診する
生活習慣病の予防と管理
- 糖尿病や高血圧がある方は、しっかりとコントロールする
- 定期的に通院し、処方された薬は指示通りに服用する
腎臓に優しい生活
- 減塩を心がける
- バランスの良い食事
- 適度な運動習慣
- 禁煙
- 適正体重の維持
- 十分な睡眠
薬剤使用の注意
- 必要な薬以外は使用しない
- 市販薬やサプリメント使用前に医師・薬剤師に相談
- 腎臓に負担をかける可能性のある薬剤(NSAIDsなど)の使用に注意
まとめ
慢性腎臓病(CKD)は自覚症状が少ないまま進行し、心筋梗塞・脳卒中・腎不全・透析のリスクを高める病気です。しかし、早期に発見し、血圧・血糖・脂質の管理、減塩、生活習慣の改善を行うことで、進行を大幅に遅らせることができます。
健診で「腎臓の数値が高い(クレアチニン・eGFR)」や「尿蛋白」を指摘された場合は、早めにご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 慢性腎臓病は治りますか?
失われた腎機能は戻りませんが、進行を止めることは可能です。
Q2. 自覚症状はありますか?
初期はほとんどありません。検査が唯一の発見方法です。
Q3. なぜ高血圧が腎臓に悪いのですか?
腎臓は細い血管の塊であり、高血圧でダメージを受けやすいためです。
Q4. タンパク質は控えた方がいいですか?
進行度により制限が必要な場合があります。医師に相談してください。
Q5. 透析はいつから始まりますか?
eGFRが10前後、または尿毒症症状が強い場合に開始を検討します。
参考文献
※本記事は、日本腎臓学会「慢性腎臓病ガイドライン2024」や厚生労働省の公式情報など上記を参考に、医師が内容を精査し作成しています。


















