妊婦向けRSウイルスワクチン(アブリスボ)
薬師堂かたおかクリニック 院長 片岡 尚之(かたおか たかゆき)
平成27年 大阪医科薬科大学卒業/同大学病院 初期研修修了/同大学 呼吸器外科 後期研修修了/市立ひらかた病院 呼吸器外科 医長・救急科 医長
妊娠経過の管理は、妊婦健診を受けていただいている産婦人科の先生にお願いしています。当院では内科・かかりつけ医として、公費対象となるワクチン接種を安全に実施し、体調管理や他の予防接種との調整をサポートします。RSウイルス感染症そのものは乳幼児に重い肺炎・細気管支炎を引き起こす呼吸器感染症であり、日頃の診療でその重症化リスクの高さを実感しています。
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RSウイルスは、乳幼児に重い肺炎や細気管支炎を引き起こすウイルスで、特に生後数ヶ月以内の赤ちゃんが感染すると重症化し、入院が必要になることも少なくありません。2026年4月1日より、お腹の赤ちゃんをRSウイルスから守るための母体へのワクチン接種「アブリスボ」が定期接種となり、対象となる妊婦の方は原則無料で接種を受けられるようになりました。
長岡京市の薬師堂かたおかクリニックでは、内科・呼吸器のかかりつけ医として、公費助成の指定医療機関でのワクチン接種を行っています。接種のタイミングや安全性について、お一人おひとりの状況に合わせてご相談に応じています。
RSウイルスとワクチンの概要
RSウイルスとは

乳幼児に重い肺炎や細気管支炎を引き起こすウイルスです。特に生後数ヶ月以内の乳児が感染すると重症化しやすく、入院が必要になるケースも少なくありません。ほとんどの子どもが2歳までに一度は感染するとされる、非常にありふれたウイルスでもあります。
ワクチンの役割

妊娠中のお母さんに接種することで、体内で作られた抗体が胎盤を通じて赤ちゃんに移行します。これにより、出生直後からRSウイルスに対する免疫を授けることができます。
抗体が赤ちゃんに移行し、十分な効果が出るまでには接種から少なくとも2週間(14日)程度かかります。接種後14日未満で出産した場合、赤ちゃんへの抗体移行は「なし」と考える必要があります。前置胎盤などで分娩日があらかじめ決まっている方は、余裕をもった時期の接種について医師にご相談ください。
ワクチンの種類
組換えRSウイルスワクチン(製品名:アブリスボ)が対象です。※アレックスビー®(GSK社)は60歳以上を対象としたRSウイルスワクチンで、妊婦への母子免疫の適応はないため対象外です。
RSウイルスワクチンは何科で受けられる?
妊婦健診を受けている産婦人科での接種が一般的ですが、当院のような内科・かかりつけ医でも公費助成の指定医療機関として接種を行っている場合があります。妊婦健診のスケジュールや体調に合わせて、通いやすい医療機関をお選びください。
対象者と接種時期(2026年4月からの定期接種化)
| 項目 | 変更前(〜2026年3月) | 変更後(2026年4月〜) |
|---|---|---|
| 位置づけ | 任意接種(自費) | 定期接種(A類疾病) |
| 費用 | 全額自己負担(施設により異なりますが目安2〜3万円程度) | 対象者は原則無料(公費) |
- 対象者:接種時に住民票のある市区町村から予診票が交付されている妊婦の方(過去の妊娠時に接種したことがある方も対象になります)
- 接種可能な期間:妊娠24週0日〜36週6日
- 【重要】公費助成(定期接種)の対象期間:妊娠28週0日〜36週6日 ※24週0日〜27週6日の間でも接種は可能ですが、自費となりますのでご注意ください
なぜ28週以降の接種が勧められるのか
接種する妊娠週数によって、生まれた赤ちゃんを重いRSウイルス感染症から守る効果に差があることが分かっています。
| 接種した妊娠週数 | 生後6か月までの重症RS感染症予防効果 |
|---|---|
| 24週0日〜27週6日 | 43.7% |
| 28週0日〜31週6日 | 88.5% |
| 32週0日〜36週6日 | 76.5% |
※国際共同第Ⅲ相試験(MATISSE試験)の乳児参加者における解析結果。出典:日本周産期・新生児医学会「妊婦に接種するRSウイルス母子免疫ワクチンについて 追補版①」(2024年8月23日)
公費助成の対象期間が28週以降に設定されているのは、この有効性データが根拠のひとつになっています。
費用と受診方法
- 費用:公費助成(無料) ※市区町村により一部自己負担が発生する場合があるため、予診票をご確認ください
- 持ち物:母子健康手帳、市区町村から送付された予診票、健康保険証
- 予約方法:当院の受付窓口、またはお電話にて承っております(在庫確保のため、1週間前を目安に事前予約をお願いしております)
安全性・副反応について
国内外の臨床試験において、生まれた赤ちゃんに重篤な安全性の問題は認められていません。462人の日本人妊婦が参加した試験でも、有効性・安全性が確認されています。
- お母さんの副反応としては、接種部位の痛み・頭痛・筋肉痛などが多く、多くは数日以内に自然に軽快します
- 免疫不全など基礎疾患がある方は、事前に必ず医師にお伝えください
- 強い痛みや高熱など、通常と異なる症状が出た場合は医療機関にご連絡ください
- 体調がすぐれない日は接種を見合わせ、日程を調整しましょう
承認前の臨床試験では、ワクチン接種群でプラセボ群に比べて早産の割合がわずかに多い傾向が見られましたが、統計的に明確な関連は示されていません。米国での大規模な接種データ(約1万人規模)でも、早産の発生率はワクチン導入前の想定範囲内でした。ワクチンだけが早産の原因とは考えにくいとされていますが、気になる点があれば接種前に担当医にご相談ください。
他のワクチンとの同時接種
破傷風・ジフテリア・インフルエンザ・新型コロナワクチンなど、妊婦に推奨されている他の多くのワクチンと、同日または任意の間隔で接種することが可能です。医師が必要と判断した場合に実施しますので、体調やスケジュールを考慮のうえご相談ください。
百日咳の成分を含むワクチン(Tdapなど)とアブリスボを同時接種すると、百日咳に対する免疫応答がやや低下する可能性が報告されています。他院で百日咳ワクチンの接種歴・接種予定がある場合は、必ず医師にお伝えください。
接種が間に合わなかった場合は?「ニルセビマブ」という選択肢
出産が早まってワクチン接種から14日経っていなかった場合や、重症化リスクの高い赤ちゃんの場合は、生まれた赤ちゃんに直接、RSウイルスに対する抗体を投与する「ニルセビマブ(製品名:ベイフォータス)」という選択肢があります。妊婦への「アブリスボ」接種とは対象・仕組みが異なる、補完的な予防手段です。
| アブリスボ(母子免疫ワクチン) | ニルセビマブ(ベイフォータス) | |
|---|---|---|
| 対象 | 妊婦(本人が接種) | 生まれた新生児・乳児(本人に投与) |
| 仕組み | 母体で抗体を作り、胎盤を通じて移行(能動免疫) | 出来上がった抗体を直接投与(受動免疫) |
| タイミング | 妊娠28週〜36週での接種が基本 | 出生後、RSウイルス流行シーズン前後に投与 |
| 相談先 | 産婦人科・内科(当院を含む) | 小児科 |
※ニルセビマブは小児科での相談・投与となります。当院では取り扱っておりませんので、出生後にかかりつけの小児科医にご相談ください。
よくあるご質問(Q&A)
RSウイルスワクチンは何科で受けられますか?
なぜ妊娠中に接種する必要があるのですか?
赤ちゃんへの抗体はいつから効き始めますか?
赤ちゃんや母体への安全性・副作用は?
他のワクチン(インフルエンザ等)と同時接種はできますか?
いつから予約が可能ですか?
里帰り出産を予定していますが、公費で受けられますか?
接種のタイミングが合わなかった場合、他に赤ちゃんを守る方法はありますか?
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「アブリスボ筋注用」医療用医薬品情報
- 日本周産期・新生児医学会 感染症対策委員会「妊婦に接種するRSウイルス母子免疫ワクチンについて 追補版①」(2024年8月23日)
- Kampmann B, et al. “Bivalent Prefusion F Vaccine in Pregnancy to Prevent RSV Illness in Infants.” N Engl J Med. 2023;388:1451-1464.
- 日本小児科学会「日本におけるニルセビマブの使用に関するコンセンサスガイドライン」
※本記事は、上記資料を参考に医師が内容を精査し作成しています。より詳しく知りたい方はアブリスボ.jp(一般の妊婦向けの解説サイト)もご参照ください。
月〜土診療 / 京都府長岡京市今里西ノ口7-1











